根岸研究室(電力・エネルギーシステム研究室)への配属および共同研究を希望する場合は,電気電子情報工学科の場合は,輪講1で根岸研究室を希望する必要があります。また,総合工学プログラムの場合は2年生のグループワークIIの講義と並行して行われるガイダンスと手続きに参加して根岸研を希望する必要があります。
私の人となりについては「神大の先生」に掲載されている記事を読んでいただけると,その一端がわかるかと思います。
研究対象について
本研究室では,いわゆる強電分野である電力システムを対象として研究活動を行っています。電力システムの研究というと,「エネルギー工学」や「電力工学」といった講義で扱う発電機や送配電網といった電気工学の研究をイメージするかもしれません。
そのイメージは部分的に正解ですが,実際は異なります。スマートグリッドやデジタルトランスフォーメーションといった言葉に代表されるように,電力システムを含めた社会インフラは,データサイエンスをはじめとした数理科学との融合を経て新しい姿に生まれ変わりつつあります。そのような時流もあり本研究室では,電力システムと数理科学の知見を活かした新しい電力システムの運用方法の創出を目指しています。すなわち,本研究室は,”電気×情報系”という境界領域の研究室です。本研究室の研究ビジョンについては研究内容のページを確認してください。
昨年度の研究室での卒業研究テーマからも,みなさんがなんとなく想像するような”強電系”の研究にとどまらないことが分かるかと思います。
- 柔軟性を電力系統に提供する太陽光発電の計画発電モデル
- 仮想発電所(VPP)の運用最適化モデル
- 電気自動車スタンドの設備容量最適化
- 一般家庭の電力需要・給湯需要の確率モデル
- 最適潮流計算を用いた配電系統のエネルギーデバイス運用の最適化
- 複数地域のエネルギーミックス最適化モデル
- 価格弾力性を用いた小売電気事業者の電気料金単価最適化
これらのテーマに関心があり,私たちとの共同研究を希望する学生のみなさんは,ぜひ本研究室を志望してください。本研究室では,新しい時代を切り開く志のある学生を歓迎します。
(参考)右の動画は2021年度のオープンキャンパス用の動画ですが,研究室のビジョンや研究内容について詳しく説明しているので参考になるかもしれません。
日々の研究活動
2022年度は主に対面形式での打ち合わせを再開しました。設立2年目で研究室内の整備が進んできたのもあり,研究室に通ってもらいながら研究活動を進めていくスタイルに戻りつつあります。その一方で様々な理由で大学に来れない場合には,オンラインでの研究活動の実施もしています。
自分の研究テーマの遂行
日々の研究活動は,教員と相談したあるいは自分で立てた研究の目標・スケジュールに応じて進めます。卒業研究・大学院での研究は,教員も十分なサポートを行いますが,最終的には自律的に自主性をもって取り組まなければ目標を達成することができません。そのため,最低限の基準として週20時間以上の研究活動の実施をお願いしています。
2023年度からは下記の通り研究室のコアタイムを導入する予定です。コアタイムとは,研究室に来て集中して研究活動を行う時間です。
コアタイム:月曜~金曜11時~15時
一見厳しいように感じるかもしれません。しかし,どの研究室に所属しても,卒業研究は十分な時間をかけないと,卒業できるレベルの結果を出すことは到底できません。また,アルバイトについては禁止ではありませんが,コアタイムには必ず研究活動ができるように調整してください。
本研究室では,就職してからすぐに活躍できるスキル(プレゼンテーション・進捗管理・プログラミング・報告など)をしっかりと身に着けてもらうため,以上のようなコアタイムを設けています。その点を理解してください。
ミーティング
週に1回,教員と1対1での個別ミーティングを行います。個別ミーティングでは,みなさんの研究活動の報告や研究の方向性に関する相談を行います。
また月に1回程度,研究室の全員が参加する全体ミーティングを行います。全体ミーティングでは,自分の研究内容に関する発表や研究活動・専門知識に関するレクチャーを行います。
これらのミーティングを経ることで,自分の研究テーマに対する理解を深め,相手に伝わるプレゼンテーション能力の獲得につなげることができます。ミーティングの価値はみなさんの貢献によって変化します。根岸研究室では,研究室内活動に対するみなさんの積極的な貢献を期待しています。
専門ゼミ
週に1回,研究室全員で集まって専門ゼミを行います。電力システムに関する最新ニュースを発表したり,数理最適化に関する専門書を輪講して研究に必要な専門的な知識を身に着けます。
これらの専門ゼミを経ることで,自分の研究テーマを進めるための専門知識を身に着けることができます。また勉強する内容は,社会でのニーズが高い分野ですので,これらの知識があることは就職活動でも有利に働くでしょう。
学会発表
みなさんが実施した研究の成果を社会に還元するため,学会発表を行います。学会発表では,近い分野(たまに異分野)の大学・研究所の研究者や産業界の人に向けて,自身の研究成果についてわかりやすくプレゼンテーションを行います。
学会発表の形式は主に2種類あります。スライドを使った数分~数十分の口頭発表と,研究成果を記載したA0のポスターの前で通りすがりの人にプレゼンテーションをするポスター発表です。この学会発表の機会に思わぬ縁があり,新しい人とのつながりを獲得することもあります。
ここ3年は新型コロナの影響で,リモートでの開催が続いていますが,もともと学会発表は様々な都市で開催されてきました。ただ,最近は「with コロナ」ということで,徐々に対面・オンラインのハイブリッドでの開催が増えてきています。日本全国あるいは海外。見知らぬ土地に行き,人や街との触れ合いを通じて自らの見識を広げるよい機会です。有効に活用してください。
輪講1・総合工学演習
電気電子情報工学科の3年生は,配属先の研究室が決まるとその研究室で「輪講1」を受講することになります。昨年度の輪講1では,全員の都合を合わせて決まった日時に「電力システム工学ゼミ」「プレ卒研」を行いました。
「電力システム工学ゼミ」では,電力システム工学に関する専門書を輪読します。あらかじめ,担当するページを決めてみなさんに講義形式で専門書の内容をプレゼンしてもらいます。内容は発電機の制御や電力系統の解析方法など様々です。
「プレ卒研」では,3人1班としてテーマを決めて,テーマにあわせたシミュレーションモデルを作成してもらいました。ここで,研究に使うPythonの使い方に慣れることができます。
今年度は4月にできる新研究室の学生と一緒に輪講1を実施しますので,内容については若干の変更をする予定です。
総合工学プログラムの3年生は,配属先の研究室が決まると「総合工学演習」を受講することになります。今年度の総合工学演習では,本研究室で実施されている研究プロジェクトに加わってもらい,ほかの学生と一緒に研究室内のミーティングやゼミに参加して研究活動を行っています。
いずれについても,みなさんの予定を合わせて実施します。
研究のアプローチ
本研究室ではコンピュータ・シミュレーションをベースとした解析が主なアプローチとなります。そのため,PythonやC言語・MATLABといったプログラミング言語を用いたコーディングを行って研究活動を進める必要があります。とはいえ,変数の定義や配列,if文やfor文に関する知識があれば対応できるので,例年プログラミングに苦手意識がある人でも対応できています。
本研究室では以下のような専門知識を主に扱います。みなさんが講義で勉強した内容に加えて,最新の電気工学・情報科学に関する知識を必要に応じて勉強する必要があります。
- 電力システム工学(電力系統の潮流計算・発電機の経済負荷配分・発電機制御)
- 数理最適化(線形計画法・整数計画法・確率計画法・メタヒューリスティクス)
- 機械学習(回帰モデル・コピュラ・MTシステム)
- 制御工学(フィードバック制御・PID制御)
上記の専門内容に関連して,必須ではありませんが,本研究室での指導を希望する場合には以下に示す学科の講義を受講していることを推奨します。
- 電気回路I・II
- 確率・統計I・II
- プログラミング演習
- エネルギー工学
- 電力工学
- 基礎制御工学
研究環境
研究室には1人1台の机・デスクトップPCが割り当てられており,集中して研究に取り組める環境を整えています。また必要な学生には最新型のノートPCを貸し出しています。
大規模な最適化問題や機械学習といった計算負荷の高い科学技術計算を行う際には,研究室で所有している高性能なLinuxサーバにアクセスし,サーバ上で計算を行うこともできます。
これらの設備に加えて,学生の皆さんが研究活動に必要だと思うものは随時導入し,環境改善に努めています。


以上のような情報を踏まえて,根岸研究室への配属および共同研究を希望する人はぜひ志望してください!
(2022/09/09 文責:根岸)