本研究室での配属を希望する学生へ(2025年度版)

根岸研究室(電力・エネルギーシステム研究室)への配属および共同研究を希望する場合は,7月~8月に行われる研究室配属の希望調査で根岸研究室を希望する必要があります。私(根岸)の人となりについては「神大の先生」に掲載されている記事を読んでいただけると,その一端がわかるかと思います。

[Information] For international students who are not currently affiliated with Kanagawa University and wish to join this laboratory, please read the following page using machine translation and refer to the page (International Student Recruitment) before making an inquiry.

研究対象について

本研究室では,いわゆる強電分野である電力システムを対象として研究活動を行っています。電力システムの研究というと,「エネルギー工学」や「電力工学」といった講義で扱う発電機や送配電網といった電気工学の研究をイメージするかもしれません。

そのイメージは部分的に正解ですが,実際は異なります。スマートグリッドやデジタルトランスフォーメーションといった言葉に代表されるように,電力システムを含めた社会インフラは,データサイエンスをはじめとした数理科学との融合を経て新しい姿に生まれ変わりつつあります。そのような時流もあり本研究室では,電力システムと数理科学の知見を活かした新しい電力システムの運用方法の創出を目指しています。

すなわち,本研究室は“電気×情報系”という境界領域の研究室です。本研究室の研究ビジョンについては研究内容のページを確認してください。

昨年度の研究室での卒業研究テーマからも,みなさんがなんとなく想像するような”強電系”の研究にとどまらないことが分かるかと思います。

  • 宇宙太陽光発電の普及に向けた経済的ボトルネック分析
  • 地球食による日射量の変化を考慮した宇宙太陽光発電システムからの受電量分析
  • 配電網を考慮した電気自動車の充電コスト最小化
  • 貨物用電気自動車を対象とした充電需要推計
  • 地理情報システムを用いた浮体式洋上風力発電の発電出力分析
  • エリア発電出力をもとにした風力発電パワーカーブの推定
  • 地域間連系線を考慮した多地域エネルギーミックス最適化
  • 二酸化炭素貯留 (CCS)を含めたエネルギーミックス最適化
  • 異なるインセンティブ比率における多様な需要家を考慮したアグリゲーターの利益最大化
  • 配電網を考慮したアグリゲータによる運用計画最適化
  • 配電網と需要家機器運用を考慮したP2P電力取引手法の開発
  • 短期間の学習データに基づく発電機起動停止計画問題の求解時間高速化
  • 機械学習を用いた発電機の高速起動停止パターン生成と最適化時間短縮

これらのテーマに関心があり,私たちとの共同研究を希望する学生のみなさんは,ぜひ本研究室を志望してください。本研究室では,新しい時代を切り開く志のある学生を歓迎します。

(参考)右の動画は2021年度のオープンキャンパス用の動画ですが,研究室のビジョンや研究内容について詳しく説明しているので参考になるかもしれません。

本研究室に所属した際のスケジュールを紹介します。

<B3>
・7月~8月:研究室配属
・9月下旬(後期開始):輪講1・実験IV(プレ卒研)開始
・10月:研究室新歓
・1月:プレ卒研発表会
<B4>
・4月:卒業研究に着手,専門ゼミの開始
・4月:研究室懇親会
・7月:研究進捗報告会,打ち上げ
・10月:夏休みの活動報告会,研究進捗報告会
・11月下旬~12月上旬:卒業研究中間発表会
・2月上旬~中旬:卒業論文の提出,卒業研究発表会
・3月:研究室追いコン
<M1~M2>
・研究室内の予定はB4と同じ
・国内学会発表,国際会議発表
・M2の8月ごろ:修士論文中間発表
・M2の2月ごろ:修士論文審査
<D1~D3>
・国内学会発表,国際会議発表
・博士課程学生向けの研究助成応募
・博士論文審査

輪講1・電気電子情報実験IV

電気電子情報工学科の3年生は,9月に配属先の研究室が決まるとその研究室で「輪講I」と「電気電子情報実験IV」を受講することになります。今年度の輪講Iでは「スマートグリッドゼミ」,電気電子情報実験IVでは「プレ卒研」を行う予定です。

「スマートグリッドゼミ」では,「図解でわかる再生可能エネルギー×電力システム」での各章を3年生の中で分担してプレゼンし,その回で扱う内容に関連するニュース紹介も合わせて行い,最新のエネルギー技術動向について学びます。

「プレ卒研」では,卒業研究の実施に向けて各自の研究テーマを仮決定し取り組みます。対応する研究グループの先輩や教員のもと,研究テーマに対する理解や研究を進めていきます。最後に研究テーマに関する研究背景や目的,手法についてプレゼンテーションを行います。

卒業研究・大学院での日々の研究活動

4年生以降は本格的に研究活動に携わることになります。本研究室では,基本的に毎日研究室に通ってもらいながら研究活動を進めていくスタイルをとっています。

自分の研究テーマの遂行

日々の研究活動は,教員と相談したあるいは自分で立てた研究の目標・スケジュールに応じて進めます。卒業研究・大学院での研究は,教員も十分なサポートを行いますが,最終的には自律的に自主性をもって取り組まなければ目標を達成することができません。そのため,最低限の基準として週20時間以上の研究活動の実施をお願いしています。

根岸研究室はコアタイムを導入しています。コアタイムとは,研究室に来て集中して研究活動を行う時間です。就活や授業などの事情は踏まえて個々に調整は可能です。

コアタイム:月曜~金曜11時~15時

一見厳しいように感じるかもしれません。しかし,どの研究室に所属しても,卒業研究は十分な時間をかけないと,卒業できるレベルの結果を出すことは到底できません。これは,卒業研究と輪講IIに10単位を割かれている(文科省通達によると,1単位につき45時間の学修が必要なので最低450時間の活動が必要)ことからも明らかです。また,アルバイトについては禁止ではありませんが,コアタイムを中心として打ち合わせやゼミなどの日程調整を行いますので,基本的に時間を空けておくようにしてください。

本研究室では,就職してからすぐに活躍できるスキル(プレゼンテーション・進捗管理・プログラミング・報告など)をしっかりと身に着けてもらうため,以上のようなコアタイムを設けています。その点を理解してください。

ミーティング

週に1回,研究グループ内で集まって実施するグループミーティングを行います。グループミーティングでは,みなさんの研究活動の報告や研究の方向性に関する相談を行います。

また月に1回程度,研究室の全員が参加する全体ミーティングを行います。全体ミーティングでは,自分の研究内容に関する発表や研究活動・専門知識に関するレクチャーを行います。

これらのミーティングを経ることで,自分の研究テーマに対する理解を深め,相手に伝わるプレゼンテーション能力の獲得につなげることができます。ミーティングの価値はみなさんの貢献によって変化します。根岸研究室では,研究室内活動に対するみなさんの積極的な貢献を期待しています。

専門ゼミ

週に1回,研究室全員で集まって専門ゼミを行います。電力システムに関する最新ニュースを発表したり,数理最適化に関する専門書を輪講して研究に必要な専門的な知識を身に着けます。

これらの専門ゼミを経ることで,自分の研究テーマを進めるための専門知識を身に着けることができます。また勉強する内容は,社会でのニーズが高い分野ですので,これらの知識があることは就職活動でも有利に働くでしょう。

学会発表

みなさんが実施した研究の成果を社会に還元するため,学会発表を行います。学会発表では,近い分野(たまに異分野)の大学・研究所の研究者や産業界の人に向けて,自身の研究成果についてわかりやすくプレゼンテーションを行います。

学会発表の形式は主に2種類あります。スライドを使った数分~数十分の口頭発表と,研究成果を記載したA0のポスターの前で通りすがりの人にプレゼンテーションをするポスター発表です。この学会発表の機会に思わぬ縁があり,他大学の先生や学生・企業の方々など新しい人とのつながりを獲得することもあります。この学会発表がきっかけとなって,様々な企業への就職につながることもあります。

日本全国あるいは海外。見知らぬ土地に行き,人や街との触れ合いを通じて自らの見識を広げるよい機会です。有効に活用してください。

その他の様々な成長機会

本研究室では,先述した学会発表以外にも様々な成長・経験を得ることのできる機会を提供しています。

例えば,他大学の研究室との共同研究や,パワーアカデミーが主催している産学交流会学生交流会(GPAN)への参加,研究室での設備見学会,企業の方を招いた電力・エネルギー分野の仕事紹介,電気学会東京支部学生研究発表会での発表(4年生)などがあります。機会があればぜひ参加・チャレンジしてみてください。

研究のアプローチ

本研究室ではコンピュータ・シミュレーションをベースとした解析が主なアプローチとなります。そのため,Pythonをはじめとしたプログラミング言語を用いたコーディングを行って研究活動を進める必要があります。とはいえ,変数の定義や配列,if文やfor文といったプログラミングの初歩的な知識があれば対応できるので,例年プログラミングに苦手意識がある人でも研究を行うことができています。

本研究室では以下のような専門知識を主に扱います。みなさんが講義で勉強した内容に加えて,最新の電気工学・情報科学に関する知識を必要に応じて勉強する必要があります。

  • 電力システム工学(電力系統の潮流計算・発電機の経済負荷配分・発電機制御)
  • 数理最適化(線形計画法・整数計画法・確率計画法・メタヒューリスティクス)
  • 機械学習(回帰モデル・コピュラ・MTシステム)
  • 制御工学(フィードバック制御・PID制御)

上記の専門内容に関連して,必須ではありませんが,本研究室での指導を希望する場合には以下に示す学科の講義を受講していることを推奨します。

  • 電気回路I・II・III
  • 確率統計基礎,確率統計最適化
  • プログラミング言語I・II・III
  • エネルギー工学
  • 電力工学
  • 基礎制御工学

大学院への進学

本研究室では,大学院への進学を強く推奨しています。内閣府のディスカッションペーパー[Ref.]によると,どの年代においても大学院卒の方が学部卒よりも年収プロファイルが高く,年収の伸び率も大きいという調査結果が得られています。このことから,生涯年収ベースで考えると数千万円オーダーの年収差が生じます。国公立の大学院で修士を取るのにおおよそ120万円,私立の大学院でおおよそ300万円(神奈川大学で内部進学し学内の給付型奨学金を利用すれば,国公立大学以下の水準まで大幅に減額可能)ですので,十分に元が取れる自己投資です。

また,大学院に進学し修士までの3年間もしくは博士までの6年間研究活動を行うことで,リテラシー(読む力・書く力・伝える力)を大幅に向上させることができる上,専門分野を獲得することで関連する大手企業への就職が学部卒よりもかなり容易になります。

進路先は本学でも他大学でもかまいません。ぜひ大学院へ進学し,十分な科学リテラシーを有して社会で活躍してください。

[Ref.] 柿澤寿信・平尾智隆・松繁寿和・山﨑泉・乾友彦:「大学院卒の賃金プレミアム ―マイクロデータによる年齢-賃金プロファイルの分析―」,ESRI Discussion Paper Series,No.310 (2014)

研究環境

研究室には1人1台の机・デスクトップPCが割り当てられており,集中して研究に取り組める環境を整えています。また必要な学生には最新型のノートPCを貸し出しています。

大規模な最適化問題や機械学習といった計算負荷の高い科学技術計算を行う際には,研究室で所有している高性能なLinuxサーバにアクセスし,サーバ上で計算を行うことができます。

さらに,研究に必要な最先端の科学技術計算ソフトウェアのライセンスを多数所有しています。最新の状況は研究環境のページを確認してください。

これらの設備に加えて,学生の皆さんが研究活動に必要だと思うものは随時導入し,環境改善に努めています。

学生居室(23号館612)
研究用ラックサーバ

所属学生の就職先について

これまでに本研究室に所属した学生が就職した企業名は,メンバーページにまとめています。

就職先として選ばれている業界としては,電力会社や重電系のメーカー,サブコンが主になっています。企業の方から本研究室を対象とした説明会や見学会を実施していただくことで,学生と企業のマッチングを図り,自分に合った業界・企業選択ができるように支援しています。


以上のように本研究室では,みなさんが成長するための多くの機会や環境を提供しています。この研究室を使いたおして大きく成長してくれることをスタッフ一同期待しています。これらの情報を踏まえて,根岸研究室への配属および共同研究を希望する人はぜひ志望してください!

(2025/05/16 文責:根岸)